平野啓一郎『ある男』の感想【本屋大賞2019最有力・ネタバレあり】

やっほう!小説大好きテツヤマモト (@okapo192)です!

今回は本屋大賞2019にもノミネートされている、平野啓一郎さんの『ある男』の感想をまとめていきます。

『ある男』ってどんなお話なの?
読んでみたけど、イマイチ理解できなかった…。どんなところがポイントなの?

この辺り解説してします!

 

僕は2019年に映画化される『マチネの終わりに』を読んでから、平野啓一郎さんの作品の大ファンです。

人間の愛情の書き方に深みがあって、どんどん物語の感情移入してしまう不思議な感覚を覚えるんですよね…。

 

そして『ある男』も傑作です!

愛とは何か?過去とは何か?

人間のものすごく深い部分を表現できていて、なんだかもう読後に不思議な感覚を覚えるはずです…。

ずばり「買い」の小説なので、気になる方は手にとってみるといいですよ!

テツヤマモト
なかなかヘビーな小説ですけど、スラスラと読めるのが平野さんの特徴ですね…。

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平野啓一郎 『ある男』のあらすじは?

『ある男』は、2018年9月28日に発売された平野啓一郎さんの最新作です。

小説のキャッチフレーズは「愛にとって過去とはなんだろう?」です。

 

まずは、少し長いですが、Amazonからあらすじを引用してみます。

愛したはずの夫は、まったくの別人であった。

「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作!

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。

ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。

人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。

人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

ざっくり言うと、「自分の夫が別人だった」という話です。

少しネタバレすると、このお話はファンタジーではなく、闇の戸籍交換業者によって他人と戸籍交換して生活している人間がいたとすれば…と言うお話です。

 

例えば、自分の家族と縁を切りたい時、誰かと戸籍交換をしてしまえば、本名を名乗らなくて済みますし、自分の過去を捨てて新しい自分を生きられます。

果たしてそんな「戸籍交換」をした人は、誰かを愛し、愛されることはできるのか?どんな人生を歩むんでしょうか?

 

不可解な出来事に巻き込まれた、主人公の城戸弁護士を通して、この信じられない事件が紐解かれていきます。

テツヤマモト
今までたくさんの小説を読んで来ましたけど、ここまで不思議な感覚になった小説は初めてかもしれません…

>>平野啓一郎 -『ある男』の公式サイト

作者の平野啓一郎さんについて

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著者の平野啓一郎さんは、京都大学の大学生だった1999年に『日蝕』で、当時最年少23歳で芥川賞を受賞しました。

三島由紀夫らから強く影響を受けた、純文学的な表現に跳んだ文体が特徴の作家さんです。

また、政治的な思想が作品に垣間見えるのも彼の作品の特徴ですね。

こちらは本人のTwitterなどを参照して、普段から考え方を知っておくと抵抗なく作品も読み進められそうです。

 

近年の代表作は、2019年に映画化が予定されている『マチネの終わりに』でしょうか。

こちらはアメトーークの「読書芸人」で、ピースの又吉さんやオードリー若林さんが絶賛したことで話題になりました。

40代の大人の恋愛がテーマの作品だったんですが、人間の内面の描き方が素敵で、僕の人生の中でも好きな作品の1つです。

 

▼TEDでの講演経験もある方なので、こちらのお話を聞くと、彼の哲学を感じ取れるかもしれません。

平野啓一郎 『ある男』の感想・解説(ネタバレあり)

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テーマが非現実的で、少しわかりにくい小説だと感じたので、既に小説を読んだ方向けに、僕の感想や感じたことを共有します。

平野さんがどんなことを読者に伝えたかったのかを考える手助けになれば嬉しいです。

①愛に過去は必要なのか?

小説のキャッチフレーズにもなっている「愛に過去は必要なのか?」の問いについて、作品を読んだ後、どのように考えたでしょうか?

テツヤマモト
僕はこの作品を読んで、相手の過去に共感して人を好きになることもあるけど、それ以上に大事なのは「今」だよなと改めて考えさせられました。

 

小説の序盤で、夫が別人になりすましていたことを知った、里枝ちゃんは途方に暮れてしまいました。

自分が愛していた人は誰だったのか?名前はなんだったのか?話していた過去が全て嘘なら、どんな人生を歩んできたのか?

里枝の連れ子の悠人も「お父さんは誰だったのか?」と、戸惑いを見せてしまいます。

 

…が、最終的には里枝も悠人も、「ある男」になりすましていた夫・父の姿を受け入れることができました。

小説はこちらのセリフで終わります。

彼はもういない。そして、遺された二人の子供は随分と大きくなった。

その思い出と、そこから続くものだけで、残りの人生はもう十分なのではないか、と感じるほどに、自分にとっても、あの三年九ヶ月は幸福だったのだと、里枝は思った

人が人を好きになる時、過去ごと好きになることは多いです。

自分の恋人の学生時代の話だったり、若い頃の話を聞いて、この人が好きだな!と再認識する人も多いはず。

でも、大事なのは「過去」ではなく、「今」の姿ですよね。

 

▼美涼さんのこちらのセリフこそが、この作品を示す1つの重要な考え方なのかなと感じました。

城戸:「…出会ってからの現在の相手に好感を抱いて、そのあと、過去まで含めてその人を愛するようになる。で、その過去が赤の他人のものだとわかったとして、二人の間の愛は?」

美涼:「わかったってところから、また愛し直すんじゃないですか?一回、愛したら終わりじゃなくて、長い時間の間に、何度も愛し直すでしょう?色んなことが起きるから。」

*わかりやすいようにセリフを一部抜粋しています

②根底にある「人柄」で愛される

①と被るんですが、僕が印象に残ったのは城戸のこちらのセリフです。

その死が、交友を持った人たちに、深く悲しまれていることを城戸はつくづく感じた。

誰一人として、彼を悪く言う者はなかった。そして、彼らのそれぞれの心に残り続けている傷の存在も知った。

城戸は「ある男」として、別人を演じていた人物をひたすら探していました。

その最中で、別人になりすます前のある男も、別人になりすましたある男も、誰一人として彼を悪く言う人がいないことに気づきます。

 

彼は殺人犯の息子という、肩身の狭い人生を生きてきたわけですけど、それでも「普通」の人生を送ろうと誠実に一生懸命でした。

戸籍を変えても変えなくても、誰からも愛される人物でしたし、最終的には別人になりすまして幸せな家庭を築きました。

反対に、戸籍変更相手であった「谷口大祐」は、戸籍を変えた後の人生もあまり幸せそうでなく、なんだか嫌味な人間でしたよね…。

 

誠実に一生懸命生きていれば、出生や過去に関係なく、周りから愛される人間になれる。

こちらも人間の本質は「今現在の自分の姿」だったり、「根底にある人柄」なのかなって感じました。

③小説も他人の人生を生きる方法

この作品を読んで、自分も他人の人生を生きられたら…と感じた人がいるかもしれません。

実際僕も、自分の過去の嫌部分があったりなかったりするので、たまーに他人人生や境遇を羨ましく思うこともあります。

主人公の城戸も、在日・冷めた夫婦関係といったネガティブな現状があり、他人の人生を生きられたら…と考えるシーンがたくさん出てきました。

 

後半おもしろいなと感じたセリフです。

他人の人生を生きるってことに興味をそそられていって、彼が捨てたかった人生のことを想像して、……現実逃避かな。面白い小説でも読んでる気になってるんだろう。

城戸は今回のなりすまし事件に関して、小説を読むような気分で、今回の調査に夢中になっていたと話します。

 

思えば、小説は「他人の人生を生きる」ことが体験できる娯楽ではないでしょうか。

別に戸籍交換などしなくとも、小説を読んでいる間は、自分の人生を忘れて、他人の人生を楽しむことができます。

小説好きが小説好きである所以が、この小説に隠されているのかなと感じました。

④気になる不倫発覚シーン

終盤、城戸は冷めた夫婦関係について妻と話し合い、少し家族関係が前向きになりつつありました。

しかしそんな中で、城戸は妻の不倫発覚メッセージを見かけてしまうんですよね…。

「昨日の夜」という言葉と、子供向けのシールのようなハートの絵文字がちりばめられたそのメッセージを、城戸は反射的に、何か壊れやすいものの上に落ちている埃のように、親指でそっと払い除けた。

それに衝撃を受けるわけでもなく、城戸はさっと埃を避けるように頭の片隅にしまい込みました。

城戸は、美涼の告白?も妻の不倫にも、関心を示さずに軽く受け流しました。

これが何を意味するのか…。

 

おそらく城戸は自分の人生すら、どこか客観的に見てしまうようになったんでしょうね…。

どこかに、俺ならもっとうまく生きることの出来る、今にも手放されそうになっている人生があるだろうか?……もし今、この俺の人生を誰かに譲り渡したとするなら、その男は、俺よりもうまくこの続きを生きていくだろうか?原誠が、恐らくは谷口大祐本人よりも美しい未来を生きたように。

他人になりすますという人生のあり方を調べる中で、自分の人生にも不感的になってしまったのかな。

少し寂しげな主人公だった城戸ですが、彼も彼なりに自分の人生をうまく生きて欲しいなと読者として願いました。

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『ある男』は本屋大賞にも選ばれました!

ある男は、2019年の本屋大賞にもノミネートされています。

大賞の発表は、4月9日となっていますが、結果はどのようになることやら…。

小説好きとしては『ある男』が今年の最有力候補なのかなとも感じています。

文章の美しさ、深く愛について考えさせられる読後感…むしろ大賞をとって欲しい傑作でした。

テツヤマモト
もし、自分はこう思った!なんて解釈があったら、Twitter(@okapo192)にでもメッセージくださいませ〜

 

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