塩田武士『罪の声』のあらすじ&感想。真相に迫る事件記者に鳥肌!

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塩田武士『罪の声』読了!

2016年の「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、2017年の「このミステリーがすごい!」で第7位など、ミステリー小説としてとても評価が高い作品です。

いやーとにかく鳥肌立ちまくりでした!小説でこの感覚を抱いたのは初めてかも。

『罪の声』の概要・あらすじ

『罪の声』は2016年8月に発売された塩田武士さんの9作目の小説です。80年代に実際に起きた「グリコ・森永事件」をモデルにした本格ミステリーとなっています。

以下、amazonよりあらすじです。

京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった―。

物語の語り手は2人です。

テーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中に「ギン萬事件」で犯行に使われた録音テープを見つけます。「自分と家族があの事件に関わった!?」と不安になり、真相を確かめます。

もう1人、同時期に「未解決事件の特集」を任された新聞記者の阿久津もまた、時効を迎えた事件の真相を暴くために奔走します。

2人は30年前の事件の真相を解き明かせるのか!?…という物語です。

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僕は塩田武士さん、初めて読みました。

彼自身、元々神戸新聞社で記者をやっていたようです。新聞社の雰囲気や記者の振る舞いがリアルで、とても臨場がありました。

小説の新人賞に、12年間応募し続けて、ようやく芽が出たってかっこいいなぁ。

グリコ・森永事件とは?

さて、この小説は「グリコ・森永事件」という、実際に起きた事件を題材にしています。

30年以上前の事件なので、知らない人も多いはず。読むにあたって概要を抑えます。

グリコ・森永事件(グリコ・もりながじけん)とは、1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年)に、阪神を舞台として食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件。警察庁広域重要指定114号事件。

犯人が「かい人21面相」と名乗ったことから、かい人21面相事件などとも呼ぶ。 2000年(平成12年)2月13日に愛知青酸入り菓子ばら撒き事件の殺人未遂罪が時効を迎え、全ての事件の公訴時効が成立し、警察庁広域重要指定事件では、初の未解決事件となった。

グリコ・森永事件 – Wikipedia

グリコ・森永事件は、グリコの社長の誘拐に始まり、身代金の要求・放火・商品への毒物の混入…など、1年半に渡り、大企業と社会を不安に陥れた一連の脅迫事件です。

事件後も犯人が捕まることはなく、未解決事件として2000年に時効を迎えました。

また、事件が話題となった要因の1つに、犯人が「子供の声」を使って身代金の受け渡し指示を行なったことがあげられています。

『罪の声』では、その声の主の子供に着目して、物語が進んでいきます。

以下、ネタバレありで感想です!

『夜行』の感想、見所

1.記者の振る舞いがリアル

前述しましたが、著者の塩田さん自身が元々記者ということで、取材の様子がとてもリアルなんですよね。読み応えあります。

「あかん、あかん。女将から事件のことは話すなって、きつく言われてるんや」

構えられるのはある程度織り込み済みだった。勝負はここからだ。大皿の中を見た阿久津は「流れ」を感じた。

「それ、鯛のアラですか?」 「真鯛や。うまいでぇ」

 阿久津はカウンターに近づくと、大皿の隣に写真を置いた。

「この鯛はどうですかね?」  

写真を手にした板長は老眼なのか、腕を伸ばしてピントを合わせた。そして、苦笑といった感じで口元を歪ませた。

事件のことを話したい人なんていません。自分の身にも危険があるかもしれませんから。

そんな中、記者の阿久津は制限時間がある中で、常に相手と駆け引きをしながら「いかに聞き出すか」を考え実行していきます。

序盤では頼りない阿久津が、徐々に本領を発揮していく様子が爽快でした。

2.事件が紐解かれていく様に鳥肌!

30年以上前の事件を掘り返そうとしているわけですから、事情を知っている人も少ないし、亡くなっている人も多くいます。

その状況に負けず、少ないピースを手繰り寄せて、徐々に犯人像・犯行の様子の真相が暴かれていきます。果てしない作業ですよね…。

終盤、新聞社の上司のセリフが深い。

「俺らの仕事は因数分解みたいなもんや。何ぼしんどうでも、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という想いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそ事件の本質であり、人間が求める真実や」

因数分解を繰り返して、繰り返して…。

複雑な伏線を回収していき、最終的に事件の真相に辿り着く様子に鳥肌が立ちました。

3.暗い世界に見出す光

事件絡みの物語なので、基本的に雰囲気は暗いです。正直、読み続けるのはしんどいです。後半はもう、読んでられません…。

真相を暴くことが良いとは限らないし、被害者の心の傷が癒えることはないんですよね。

でも、未来はある。

「イギリスで曽根達雄さんに会って、犯人たちのしょうもなさを目の当たりにしました。大事件やって意気込んで蓋を開けたら、何も入ってなかった。それまでの取材のことを思うと虚しかったんですが、帰りの飛行機の中で気付いたんです。未解決事件だからこそ、今、そして未来につながる記事が必要なんやと」

「未来……」

悲しい物語の中に、読者は希望を探し続けます。そして、その希望が見えた時、実現した時、少しだけ安心して本を閉じれます。

読後、理由の付け難いため息がでました。

まとめ

気持ちよく読める小説ではありません。でも、目を向けなければいけない物語です。

事件が紐解かれていく様子にドキドキしながら、記者の臨場感を味わいながら、昭和史に残る事件と向き合いましょう。

塩田武士さん、よくぞここまで緻密なストーリーを作ってくれました。心震えました。