ピアノコンクールが舞台!恩田陸『蜂蜜と遠雷』を読んだ感想

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恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を読みました。

2016年下期の直木賞受賞作で、2017年の本屋大賞にもノミネートされている注目作です。

感想は「語彙力すごすぎ!!!」です。音楽という、どう考えても言葉にしにくい世界を小説で描き切っちゃうってどういうこと!?

 

 

『蜂蜜と遠雷』の概要、あらすじ

『蜂蜜と遠雷』は小説家、恩田陸さんの最高傑作と言って過言でない作品。

僕が彼女の作品を読むのは、第2回本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』以来、12年ぶり。小学生のとき以来か…すごいな。

 

あらすじはこんな感じです!

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。

養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。

かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。

音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。

完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。

彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

舞台は「国際ピアノコンクール」です。

世界中からプロの音楽家を目指す若者が集い、その技術と表現力を競います。物語の中心となるのは風間塵、栄伝亜夜、高島明石、マサル・C・レヴィ=アナトールの4人。

作品の特徴は「主人公」がいないことで、コンテストを取り巻く人物の心情が、代わる代わる描かれます。誰が勝ち抜くのか予想できず、最後の最後までハラハラさせられます。

 

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http://www.oricon.co.jp/news/2005162/photo/2/

著者の恩田陸さんは、本を読む・書くこと以上に、ピアノを弾くのが大好きだそうです。いやむしろ、そうじゃないとここまで音楽を文学に落とし込めるはずないな…。

作品のモデルとなった「浜松国際ピアノコンクール」には、4度の取材を敢行。「構想12年、取材11年、執筆7年」の力作です。

▼特設サイトには本人からのメッセージも。

 

以下、多少のネタバレがあります!!

『蜂蜜と遠雷』の感想、見所

『蜂蜜と遠雷』はコンクールの予選、1次予選、2次予選、3次予選と進み、本選で完結。終始、コンクールにフォーカスします。

驚いたのは、全くクラシック音楽に興味のない僕でも、難なく読破できたこと。引き込まれすぎて、時間忘れました。

素人を専門的な世界に引き込む、恩田陸さんの語彙力と表現力が何より格別でした。

 

以下、いくつか見所を紹介します。

1.個性豊かな登場人物に注目!

主な登場人物は、日本に馴染みのある4人。

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物語のコンテストは、4人を含め、全参加者がプロ級の技術を既に持っています。

「気になる」子、「ざわざわする」子、「目が吸い寄せられる」子。迷った時、最後はそういう言語化できないもやもやした感覚に頼っているのが実情だ。

技術だけでの審査は難しく、コンテストで勝ち抜くには、各々のバックグラウンドをピアノ表現に落とし込めるかにかかっています。

昔を懐古して内省していくシーン、ピアノと自分が一体となるシーンは圧巻です。

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また、ピアノの上達に向けてのアプローチがそれぞれ違うのも面白いポイント。宮沢賢治の世界観を表現するために、所縁の地まで観光する明石さんの泥臭さが好きだなぁ。

登場人物のピアノ演奏に、どんな背景・アプローチがあるのかに注目して読みましょう!

 

2.天才と天才の化学反応!

物語の中で重要な役割を担ったのが、15歳のコンテスタント「風間塵」でした。

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正規に音楽教育を受けていないのに関わらず、規格外の表現力を持った彼の演奏は、他の参加者たちに刺激を与えます。

『蜂蜜と遠雷』で僕が好きなのは、誰もが「風間塵」に感化されるんですけど、「風間塵」のマネはしないところです。

あくまでも自分は自分。自分のやり方で「同じくらいピアノを楽しもう!」と奮起してベストを尽くすだけ。この心意気は大切だなぁ。

 

3.恩田陸さんの攻めの姿勢!

何度も言いますけど、音楽を「文学」にしちゃう恩田陸さんの文章表現が凄すぎです。

もっというと、音楽コンクールの最初から最後まで、みっちり表現仕切る根性がすごい。何回「演奏シーン」を読んだのだろう…。しかも同じ演奏者の。普通は飽きます。

「否が応でも、最後まで読ませる!」と読者に挑戦するような恩田陸さんに感心しちゃうし、実際飽きずに読めちゃう。完敗です。

 

4.誰を応援したくなるか?誰が勝つのか?

この物語には主人公がいません。なので、誰が勝ち抜くのか予想もできません。

しかし、読み進めると「応援したい登場人物」が生まれてくると思います。

僕は、妻子持ちでサラリーマンながら、コンクール練習に励んできた高島明石をめちゃくちゃ応援してました。「よくやったー!」…と演奏シーンでは熱がこもりました。

演奏後の奥さんのセリフ、泣けました。

あたしは音楽家の妻だ。あたしの夫は、音楽家なんだ。

どのメンバーに感情移入するかも読者それぞれ。スポーツ観戦のように、コンテストの結果を見守っていくと面白いです。

 

2017年の本屋大賞、最有力か?

今作はすでに、2016年下期の直木賞を受賞していますが、2017年の本屋大賞候補にもノミネートされています。

他のノミネート作品では『暗幕のゲルニカ』『コーヒーが冷めないうちに』も読みましたけど、今のところ一歩リードかな?

日本語文学の可能性を見せられました…。音楽好きはもっと感銘受けちゃうかも。

 

恩田陸さん久々に読めて楽しかった〜